ミシンはいつから普及した?その歴史と多様な種類を解説

ミシンと言えば、どのメーカーを思い浮かべますか?ブラザーやジャノメが浮かぶ方が多いでしょうか。

ブラザーやジャノメはミシンの先駆的な企業と言えますが、2社が誕生する100年以上前には既に世界初のミシンが誕生していました。しかし、歴史的な背景からミシンの製品化までの道のりは険しく、普及するまでには長い年月がかかっています。

そこで今回は、そんな険しい道を乗り越えながら普及していった「ミシンの誕生から普及までの歴史」を解説します。いつから日本に持ち込まれ国産第1号が販売されたのか、さらに、ミシン初心者の方に向けて「ミシンの種類や特徴」などについて幅広くお伝えします!

ミシンの歴史とは?いつから日本に普及したのか

世界初のミシン誕生から、日本への伝来・普及までの歴史について見ていきましょう。

編み機の登場からミシンの発明

ミシン開発のきっかけとなったのは、1589年のイギリスで、ウイリアム・リーによって発明された足踏み式の「靴下編み機」 でした。内職で靴下を編む妻を見たリーが、機械化を目指したことで生まれます。しかし、当時は靴下を編んで生計を立てている人が多く、その人たちの職を奪うと非難され、広まることはありませんでした。

世界で初めて公に認められたミシン は、1790年のイギリスの家具製造者トーマス・セントによって発明されたミシンだと言われています。2本の糸で縫う現在のミシン構造とは異なり、1本の糸で鎖状に縫う原理のミシンでした。しかし、セントのミシンは製品化されることはなく、一般に広まることはありませんでした 。

セントのミシン誕生後は、主に欧米でミシンの開発が進んでいきました。特にミシン開発が進んでいたのはアメリカです。1832年にアメリカのウォルター・ハント によって、現在のミシンに近い構造のミシンが誕生しています。ハントのミシンはこれまでのような1本の糸で編む構造ではなく、上糸と下糸の2本の糸で縫う構造(本縫い)で、現在のミシンの元祖となりました。しかし、意外なことに実用化には至りませんでした。

現在のミシンの構造に近い実用的なミシンは、アメリカのエリアス・ハウによって発明されます。針穴のある針を使用し、布下にボビンを設置。さらに、布を自動に送るという構造です。この構造は1846年にアメリカで特許を取得しました。

さらに、1850年にはアイザック・メリット・シンガーとウォルター・ハントが共にミシン改良研究をスタートさせ、1851年にI.M.Singer社を設立します。現在のミシンとほぼ同じ構造の回転ガマを使用した「錠縫式ミシン」を発明し特許を取得。1853年には製品化し、足踏み式の実用ミシンとして発売しました。

ミシンの伝来と国産品の登場

日本へのミシン伝来には諸説あり、1854年の黒船再来航の際だったという説が有力とされています。ペリー提督が徳川幕府へ贈った献上品の中の1つが、ウイラー&ウイルソン社のミシンだったと言われています。

明治維新の時代になると、軍服や貴婦人のドレスを製造するためにミシンが普及し始めました。ミシン普及の初期は海外製のミシンが主流でしたが、徐々に国内生産が始まります。

大正時代に入ると、1921年にパイン裁縫機械製作所(現:ジャノメ)がミシンの国産第1号機を製品化。上糸と下糸とで直線縫いをする「小型手廻しミシン」 の量産が始まりました。しかし、その当時の国産ミシンの品質は決して良いものとは言えませんでした。

昭和の時代に入ると、より品質の高いミシンの製造を目指して、1928年にブラザー工業創業者の安井正義・實一兄弟によって「昭三式ミシン」が販売されます。昭三式ミシンは海外製ミシンに負けない耐久性を持ち、ユーザーから高い評価を得ました。

戦後に高まるミシン需要

家庭用ミシンが徐々に普及する中、第二次世界大戦の開始とともに家庭用ミシンの製造は禁止され、軍用ミシンのみ製造されるようになりました。

しかし、1945年の終戦を迎えると、服を手作りする人や洋裁を仕事にしたい人が増加。それとともに、ミシンの需要が増大します。1947年には「ミシン製造会」が発足され、国産家庭用ミシンの規格寸法が初めて統一されました。規格に基づいた国産家庭用ミシン「家庭用HA-1型」が1948年に製造されるようになったのです。

その後、国産ミシンは海外へ輸出されるようになり、1950年以降には国産ミシンの輸出割合は50%を超えるまでになりました。

1960年代までは足踏み式ミシンが主流でしたが、1964年の東京オリンピック開催年には、ジャノメが完全自動機構を備えたミシンを発売。 重量も従来の半分の軽さになり、好評になりました。1970年に入ると、ミシンを嫁入り道具として持つ人も多くなり、婚姻件数とミシンの生産台数はほぼ同じだったといわれるほどでした。

1979年には日本初のコンピュータミシンが登場し、針の動きやさまざまな模様縫いがコンピュータ制御によって可能に。現在では、「自動糸調子ミシン」や「刺繍機能付きミシン」などの高機能ミシンが登場し、趣味や販売用の作品づくりなど、家庭で幅広い用途に使用されています。

歴史の中で進化したミシンの種類

歴史の流れとともに、工場・仕立て屋・一般家庭向けなど、用途別に多様なミシンが生まれてきました。

現在は、大きく分けて3種類のミシン(家庭用ミシン・職業用ミシン・工業用ミシン)があります。ここでは、3種類のミシンの特徴と違い・どのような人向けであるかについて解説します。

家庭用ミシン

家庭用ミシンは初心者の人でも、さまざまな縫い方ができるミシンです。職業用ミシンや工業用ミシンとは異なり、さまざまな縫い方ができる点が最大の特徴といえます。

ジグザグ縫いやボタンホール作り、布の種類に合わせた糸調子機能、刺繍機能を持つタイプもあります。そのため、家庭用ミシンは入園グッズや小物、洋服づくりなど、家庭でソーイングを楽しみたい人に適したミシンです。

家庭用ミシンは大きく分けて、電動ミシン・電子ミシン、コンピュータミシンの3種類があります。3種類のミシンには次のような特徴があるので、予算やソーイングのレベルに合わせて購入しましょう。

  • 電動ミシン…電気でモーターを動かすシンプルな構造のミシン。価格は安いが、糸調子や針の停止位置は手動で調節する必要があるため、初心者には扱いが難しい。
  • 電子ミシン…電子回路によって、ボタン1つで針の停止位置や糸調子、縫い目の調節ができるミシン。電動ミシンとは異なり、低速でもパワーが落ちないので厚手の生地も縫いやすい。値段と機能のバランスの良い初心者~中級者向けのミシン。
  • コンピュータミシン…内蔵されたマイクロコンピュータによって針の停止位置や糸調子、縫い目の調節を自動制御するミシン。値段は高いが、電子ミシンよりも多種多様な縫い目・複雑な模様・文字入れなどが自動でできるため、初心者~上級者にも人気が高い。

職業用ミシン

職業用ミシンは直線縫い専用のミシンです。大型のモーターを搭載しているので家庭用ミシンよりもパワーが強く、デニム生地のような厚手の生地を縫いやすい特徴があります。デニム生地の場合、12枚重ねて縫えるものも。

布をしっかり抑えられるため、縫製スピードを上げても綺麗に縫うことが可能です。工業用ミシンに比べると重量もサイズも小さめですが、重量は10kgを超えるため机の上に置いたままの収納が一般的です。

家庭で本格的な作品を作りたい人には、サイズや機能面のバランスが取れたミシンでしょう。

工業用ミシン

工業用ミシンは縫製企業で使用され、衣類や靴、バッグなどの縫物全般に使われているミシンです。

直線縫い専用のミシン・縁かがり専用のミシン・ボタン付け専用ミシンなど、1つの機能のみを持っていることが特徴。縫製スピードが職業用ミシンより高速であるため、大量生産に適しています。

重量は約80kgにもなり、運転音が大きい点から、家庭での使用には向きません。また、扱いには技術が必要なため、上級者向けのミシンといえます。

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