ラナプラザ崩壊事故とは?悲劇の背景に劣悪な労働環境が
いまから約10年前、バングラデシュで起こったラナ・プラザ崩壊事故。8階建てのビルが一瞬にして崩落したことで、1,100人以上の命が失われました。この事故により、バングラデシュにおける劣悪な労働環境や、それに依存するアパレル業界の問題点が世界中に知れ渡りました。
今回は、衣料品産業のなかでも史上最悪と言われるラナ・プラザ崩落事故について、起こった原因や大きな被害を生んだ理由を詳しくご紹介します。
ラナ・プラザ崩壊事故とは?最悪の産業事故
ラナ・プラザ崩壊事故とは、2013年4月24日にバングラデシュのシャバール(サバール)で8階建て商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落した事故のことです。シャバールが首都ダッカに近いことから、「ダッカ近郊ビル崩落事故」とも言われています。
ラナ・プラザには当時、銀行や商店のほか有名ブランドの商品を受託する縫製工場が複数入居していました。この事故による死者は1,100人以上、負傷者は2,500人以上、行方不明者は500人以上にのぼり、犠牲者の多くが縫製工場の若い女性従業員だったことから史上最悪の産業事故と呼ばれました。
ラナ・プラザ崩壊の原因は?きっかけはミシンの振動
事故後の調査から、ビル崩壊のきっかけは縫製工場で使われていたミシンの振動にあることがわかりました。事故当日の朝9時頃にこの地域で停電が起こり、ビル上層部の大型発電機が稼働しました。発電機と数千台のミシンの機械振動が共鳴した結果、建物が揺れてビルの崩壊を引き起こしたのです。
しかし、発電機とミシンによる共振はビル崩壊のきっかけのひとつに過ぎません。なぜならこのビルには、もともと下記のような問題点がありました。
- 地盤が緩い場所に建てられた
- 違法に建設された
- オフィス用ビルとして設計された
- 退去命令を無視して使用された
そもそもラナ・プラザは、池を埋め立てた地盤の緩い場所に建てられました。そのうえ、正式な許可を得ず上層3階を増設し、工場として使用していたのです。このビルはオフィス向けのビルとして設計されていたため、工場で使われる重機や機械振動に耐えられるほどの強度がありませんでした。
さらに驚くべきことに、崩壊前日には従業員がビルの壁や柱に亀裂があることを発見しており、地元警察から退去命令が出ていました。しかしビル所有者は、その命令を無視してビルの使用を続けたのです。その結果、翌朝9時にビル崩壊という最悪の事態が起きてしまいました。
ラナ・プラザ崩壊の真の事故原因は、このようなずさんな安全管理にあります。ビル所有者がコスト削減を優先し、安全性・耐震性などを無視した結果、起こった事故といえるでしょう。
ラナ・プラザ崩壊事故の背景に劣悪な労働環境
ラナ・プラザ崩壊事故で多くの死傷者が出た背景には、不当に労働力を搾取する劣悪な労働環境があります。
事故前日にビルで亀裂が発見された際、ラナ・プラザの低層部に入居していた銀行や商店はすぐに閉鎖されました。縫製工場の従業員たちも出勤を拒否しましたが、工場管理者は「仕事に戻らなければ、給与を差し引く」と従業員たちを脅しました。
また、ビル所有者が用心棒を使って従業員を強制的に出勤させたという証言もあります。縫製工場の従業員たちには労働組合の結成も認められておらず、危険を感じながらも強制的に働くしかありませんでした。
安全管理や人権を無視したために多くの犠牲者を出したラナ・プラザ崩落事故は、「不慮の事故」ではなく「人災」と言われ、ビル所有者や工場経営者は事故後に逮捕されました。
ラナ・プラザ崩壊のような事故を繰り返さないために
この悲惨な事故をきっかけに、縫製工場の現状、ひいてはアパレル業界の安売りと大量生産の裏にある労働者の劣悪な環境が明らかになりました。また、仕事を委託する側のアパレル企業が、生産現場の実態を把握していなかったことにも批判の声が集まりました。
それを受けて世界中のアパレル企業では「生産現場にも責任を持つべき」という考え方が広がり、
- 原料供給~販売までのサプライチェーンの明確化
- 生産現場での労働法順守と人権問題の改善
- 生産現場の監査
などの取り組みが進みました。また消費者の間でも、
- 購入品を選ぶこと
- 物を長く大切に使うこと
- 物を再利用すること
などの考え方が広がりました。
このような事故を繰り返さないためには、企業側と消費者側が一体となった社会全体での取り組みが必要です。「消費者側の私たちにできることは何だろう?」とお考えの方には、「キフコレ」の活用をおすすめします。
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